漱石の草枕
お茶の世界の大きな変化は、昭和30年から40年代に起こっています。やぶきた品種の占有率の高まり、深蒸し製法の開発と普及、機械の大型化と大量生産など、いずれもこの頃から顕著になっていきます。地方毎に多様だったお茶の風味は画一化し、うま味重視の傾向が強まり、本来こがね色だったお茶の水色は、濃い緑色に様変わりしていきました。また、多くのお茶は茶の商によりブレンドされ、生産者の顔が見えないものになってしまっています。
また、農薬や化学肥料の問題が顕在化したのもこの頃です。農薬や化学肥料が生産性の向上や省力化に貢献したのは確かですが、問題が顕在化してから半世紀以上たった現在でも、国内の有機農業の耕作地面積は全体の0.5%でしかありません。国が2050年には有機農業の耕作地面積を25%に拡大する目標を掲げていることから考えても、あまりにも少なすぎます。
お茶や有機農業の現状は、日本の戦後史とシンクロしています。日本は、高度経済成長期に顕在化した様々な社会問題に対して、成長路線を堅持することで対処しました。その後オイルショックやバブル崩壊で致命的な打撃を受けましたが、今なお成長主義に固執しています。経済成長はもちろん必要ですが、それだけではない新たな選択肢が求められ始めてると思います。また、人々のつながりやコミュニティが失われてきていることも大きな社会問題の一つです。キミドリは、有機栽培=オーガニックのお茶の販売を通して、新たな社会の形を考えていきたいと考えています。